「春の雪」★★☆2005年11月26日 23時52分19秒

春の雪
2005年東宝。行定勲監督。清顕役の妻夫木聡、そんなに悪くなかった。対談中に便意をもよおして中座し笑われたらしいが、仏教徒のイ・ビョンホンが誉めたのはちゃんと内容を理解しての上だと思う。聡子役の竹内結子は、原作通り身重になっての役作り?は立派だったが、はっきりいってミスキャスト。脇役では大楠道代が印象に残ったが、役を膨らませ過ぎ。若尾文子(以降、若尾ちゃんと記す)はさすがに一番存在感があった。台湾から招いた撮影のリー・ビンビンは、カメラワークが目立ち過ぎ。人物が動いてないのにカメラが先に動き出すのは邪道だと思う。同じ構図内に被写体が二つあるのにパンフォーカスにしないで片方をピンボケにするのもいただけない。聡子からの再三の手紙を清顕が読まずに焼却する一連のシーンではマーラーのシンフォニー第5番のアダージェットが使われていていい感じだった。ラブシーンはどのシーンも凡庸だったが、本田の手助けで鎌倉の海岸で二人が再会する場面、聡子が清顕の胸に走って飛び込むシーンは気に入った。宇多田ヒカルの主題歌は、サビであああ~あ~とイッテしまうところがよかった。個々に文句はいっぱいあるけれど、映画全体としてつまらなかったわけではない。退屈しなかった。指揮が凡庸でも作品自体の力でワーグナーの楽劇が楽しめるように、三島の原作自体の持つ力だと思う。