「巨船ベラス・レトラス」筒井康隆2006年02月13日 12時43分55秒

著者最新長編が完結。北宋社の無断掲載事件の経緯が描かれた「文学界」前月号が世間を騒がせたが、最終回は何もなかったかのように登場人物全員のカーテンコールがあり、華やかに大団円を迎えた。同人誌に始まり文壇や最先端の文学事情までを縦横に描いた「大いなる助走」の系譜に属する作品であるが、虚実が入り乱れ、作中人物が作者や読者を意識する手法を駆使しており、「虚人たち」につながる筒井純文学の集大成の趣がある。エンターテイメントと純文学の長編傑作を同時期に書き上げた著者の若々しいパワーに脱帽。