若尾文子特別手記 ― 2007年11月10日 20時14分44秒
文藝春秋12月号掲載の惜別手記「黒川紀章とのバロックな愛」を読みました。手記という体裁になっていますが、「ほんとうに、好きだった」という最後の会話や「バロックの恋」の真相、選挙のことなど、率直に現在の心境を語る肉声が聞こえてくるようでした。来年の舞台も決まっているようですし、今後の活躍が楽しみです。若尾さん、気を落とさずに頑張って!
「四十八歳の抵抗」★★☆ ― 2007年11月13日 00時24分41秒
1956年大映。モノクロ。石川達三原作、吉村公三郎監督。冒頭から若尾ちゃんと川口浩の濃厚なキスシーンで始まり、ブラジャーだけの下着姿になった若尾ちゃんの大胆な投げキスまで高いテンションのシークエンスが続く。胸にはキスマークがあり、肉体関係があることを暗示している。彼女の父役、山村聡が主役であり、この映画での二人の登場シーンは少ないのだが、どのシーンもとても濃密であり、これほど強烈に恋人同士の絆を感じさせる描き方は数ある共演作でも珍しい。川口が初めて家に訪ねてくるくだりで、二人が父親に分からないようにフランス語で言葉を交わすシーンも印象的だ。山村聡の父親、杉村春子の母親となると「東京物語」の長男夫婦であり、「浮草」の若尾、川口コンビとの組み合わせは小津映画と対比させたくなるが、小津のロー・アングルとは対照的に吉村・中川芳久(撮影)コンビはむしろ俯瞰めにこの家族の姿をとらえていて、次に何が起こるのか予想がつかないような不安定な感覚を観客にたえず与え続けることに成功している。ゲーテの「ファウスト」がモチーフになっていて、メフィストフェレス役の船越英二もいい味を出している。当時日本の人口が9000万人だったというのが台詞からわかる。
女優は語る 若尾文子1〜3 ― 2007年11月17日 23時36分26秒
衛星劇場。インタビューアーの水野晴郎のおかげで面白い話が聞けた。「青空娘」を「ひまわり娘」などと言い出したり、老人特有の間合いが、若尾ちゃんをリラックスさせたのか、いつになくサービス精神旺盛なインタビューとなった。山田洋次の演出方法を聞いている時にでてきた「春の雪」(若尾ちゃんもタイトルを思い出せないのが笑った)の演出批判が面白かった。本番を10回もだめだしするのだが、助監督からの指示伝達もなく、なにが前と違うのか意図不明だったそうだ。小津安二郎については、台詞まわしのがんじがらめの演出方法を具体的に説明してくれた。今村昌平監督には「にっぽん昆虫記」と「楢山節考」で誘われたが、前者を断ったのを今でも後悔しているそうだ。
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