「四十八歳の抵抗」★★☆2007年11月13日 00時24分41秒

1956年大映。モノクロ。石川達三原作、吉村公三郎監督。冒頭から若尾ちゃんと川口浩の濃厚なキスシーンで始まり、ブラジャーだけの下着姿になった若尾ちゃんの大胆な投げキスまで高いテンションのシークエンスが続く。胸にはキスマークがあり、肉体関係があることを暗示している。彼女の父役、山村聡が主役であり、この映画での二人の登場シーンは少ないのだが、どのシーンもとても濃密であり、これほど強烈に恋人同士の絆を感じさせる描き方は数ある共演作でも珍しい。川口が初めて家に訪ねてくるくだりで、二人が父親に分からないようにフランス語で言葉を交わすシーンも印象的だ。山村聡の父親、杉村春子の母親となると「東京物語」の長男夫婦であり、「浮草」の若尾、川口コンビとの組み合わせは小津映画と対比させたくなるが、小津のロー・アングルとは対照的に吉村・中川芳久(撮影)コンビはむしろ俯瞰めにこの家族の姿をとらえていて、次に何が起こるのか予想がつかないような不安定な感覚を観客にたえず与え続けることに成功している。ゲーテの「ファウスト」がモチーフになっていて、メフィストフェレス役の船越英二もいい味を出している。当時日本の人口が9000万人だったというのが台詞からわかる。

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