死の街を脱れて★★★2015年07月04日 15時44分15秒

1952年大映、モノクロ94分。五島田鶴子原作、小石榮一監督、増村保造助監督。記念すべき公式スクリーンデビュー作(クレジットなしでの出演はこの前に2作確認されている)。タイトルクレジットは水戸光子ら四人と一緒で、左端にニュースター若尾文子と出ていた。敗戦後、大陸に残された婦女子たちが、満州国の首都新京まで、野犬の群れや中国兵、なぜか同胞の列車を銃撃する日本兵など様々な困難を突破していく逃避行。以後数々の作品で共演する機関士役の菅原謙二が救いの神に見えるのは役得。サービスショットは、恋人(根上淳)と別れるシーンでのチャイナドレス姿、川で水浴するシーンでの若々しい背中とふくよかな胸元。ゴジラの巨匠伊福部昭の重厚な音楽も印象的だった。

若尾文子映画祭青春 初日舞台挨拶2015年06月27日 11時21分06秒

於角川シネマ新宿。エレベーターのペイント、往時のポスターの数々、「浮草」の着物と同じ柄の手ぬぐい、クリアファイル、一筆箋といったグッズなど、お祭りにふさわしく準備されたいい雰囲気の中で開幕。「青空娘」上映に続いて若尾文子ご本人の舞台挨拶を楽しむ。杖をついて係の人に介添えされての登壇に心配したが、転倒して怪我し、この模様に間に合わそうと無理にリハビリしたのが災いしたとのこと。トーク内容に目新しい話はなかったものの、直接小津、溝口、三島、増村と言ったレジェンドたちの想い出を語る姿に接することができて楽しかった。
「青空娘」を観たのは、9年ぶり。泣けてきてしょうがなかった。映画館で熱心な観客と一緒に鑑賞できる醍醐味であろう。

三島由紀夫「春の雪」〜禁断の恋、聡子〜2013年11月26日 20時59分44秒

於、兵庫県立芸術文化センター。原作三島由紀夫、演出石井ふく子、主演若尾文子、三田村邦彦、音楽・尺八演奏藤原道山。能舞台をイメージしたステージでの朗読劇。
映画では、年齢相応に門跡の役だったけれど、本来ならば、この舞台のように聡子をスクリーンで演じるのにふさわしいのはこの人であったろう。朗読とはいえ、生の舞台で、ゆかりのある三島作品のヒロインを演じる姿を観ることができて感激した。
ラストで、若尾ちゃん、三島自決の日を昨日のことのように記憶していると客席に向かって一言。万雷の拍手を浴びる。

邦画を彩った女優達選 若尾文子は○○である2011年12月11日 14時24分54秒

NHK BSプレミアム。若尾文子へのロングインタビュー二回から構成された番組。長谷川一夫に見いだされた映画デビューから溝口健二の「赤線地帯」までの前半が洋服、増村保造の「青空娘」以降の後半は着物で登場。長谷川との出会いについては、いつになく詳しく説明していた。小熊二匹が劇場の前にいたのをしゃがんで可愛がっていたら、出くわした長谷川がこの娘、誰それに似ているね、と言ったのだそうな。そこで女優になりたいと言ったのは、おっちょこちょいであると語っていたが、東京に帰る口実を探していたということも言っていた。永田社長が「山本富士子は高嶺の花だが、若尾文子は低嶺の花だ」と語ったとされる話は、自分が言ったことという秘話も披露。もう映画には出ないとのことで、舞台での末永い活躍を期待するしかないようだ。

「女の人さし指」2011年03月09日 22時01分49秒

三越劇場。向田邦子原作「金魚の夢」、清水曙美脚本、石井ふく子演出。昼に観た浮世絵が「金魚」、夕方の舞台も「金魚」というシンクロニシティ。若尾文子はおでん屋「次郎」の経営者。1961年の映画「東京おにぎり娘」を思い出す。あの作品では川口浩に振られてやけ酒を飲むくだりがあったが、この舞台では敵役の長山藍子につきあって飲むシーンがあるけれど、つぶれるのは長山のほう。芝居の中でも長山が褒めていたが、若尾ちゃんのビールのつぎかたが美しい。片手だけでつぐのだが、あれを見て喉がなった。
それにしてもこの劇場に来ている年配のおばさまたちの拍手のマナーはどうなっておるのだ。カーテンコールもなかった。稽古はつらく、眠れないと語った大女優に対して失礼というものでしょう。3日に初日を迎えて、昨日の休みをはさみ今日は初の2回公演で、観たのは午後の部。毎回こんなお客だけではないと信じたい。