「螢火」★★★ ― 2007年01月05日 23時45分31秒
1958年歌舞伎座映画。織田作之助原作、五所平之助監督。ついに若尾ちゃんのおりょうを見た。マリア・カラスのクンドリーを聞いたのに匹敵する喜び。時は幕末、女将・登勢(淡島千景)と養女おりょう(若尾文子)が切り盛りする伏見の旅籠「寺田屋」に坂本龍馬(森美樹)が訪れる。入浴中に龍馬に危機がせまるのを察したおりょうは、濡れ肌に袷をまとっただけの姿で階段を駆け上がり龍馬に危機を知らせる。有名なシーンであり、多くの女優が演じているが、若尾ちゃんのおりょうは気品があっていい。おりょうの勝ち気なところは若尾ちゃんのキャラクターと共通点があるのだろうが、特に強調した描き方はされておらず、内に秘めた強さが感じられた。おりょうが龍馬と薩摩に行きたいと言い出したのに反対した登勢に対して、「わたし知ってるえ。お義母さんも坂本はんが好きなのを」と言い出すくだりのしたたかさは名演技。伴淳の主人が実にいい味を出していた。
「春雪の門」★★ ― 2007年01月08日 17時20分58秒
1953年大映。富田常雄原作、佐伯幸三監督。明治の終わり、馬車で移動中に暴漢たちに襲われた伯爵令嬢(山本富士子)を助けた紘道館四段の杉龍太郎(菅原謙二)が活躍する柔道映画。クライマックスは外人ボクサーとの異種格闘技戦で、相手を失神させたほうが勝ちというルール。若尾ちゃんは破門された杉を助ける棟梁の娘。いきなり入浴シーンで登場。杉に想いをよせるが、最後は伯爵令嬢とのキューピット役を務める。「祇園囃子」と「續々十代の性典」の間に作られた作品。
第三回筒井康隆症候群オフ ― 2007年01月13日 23時57分24秒

総勢15名が参集した東京オフに参加。大盛況。画像は、虚航船団をモチーフにしたTシャツで、この日のために特別に作られた一品。素晴らしい。
「雪の喪章」★★☆ ― 2007年01月20日 17時49分24秒
1967年大映。水芦光子原作、三隅研次監督。昭和初期に金沢の金箔商に嫁いだ若尾ちゃんと旦那(福田豊士)、番頭(天地茂)、妾(中村玉緒)との間の30年にわたる愛憎劇。雪の日に誰かが死ぬというのがモチーフになっていて、結局若尾ちゃんだけが最後に残る。この頃の薫るような美しさは特筆物。火事で財産を失い、妾の営む旅館に住まわせてもらうようになった若尾ちゃんは、なにか手伝わないとという気になり薪割りを始める。この活動的な女性像は「鉄砲伝来記」のヒロインに通じるものがある。
「鉄砲伝来記」★★☆ ― 2007年01月21日 09時43分38秒
1968年大映。森一生監督。種子島に漂着し日本に鉄砲をもたらしたポルトガル船船長ピントオ(リック・ジェースン)と殿様の命令で鉄砲のコピーを作る鍛冶屋(東野英治郎)の娘若狭(若尾ちゃん)の悲恋物語。ピントオは「コンバット」のヘンリー小隊長。二人が地図を見ながら、日本とポルトガルの場所を確認するシーンでの若尾ちゃん、異人さんとはにかみながら会話する地の笑顔が見られてほほえましい。鍛冶屋の父が藩主に命ぜられた鉄砲のコピーに情熱を燃やすのを見て、何か手伝わねばと思う若狭は下働きしたり、鉄砲が盗まれたとわかるや、単身ピントオのところへ行き、もう一丁入手しようとする。他の作品にも共通する能動的な女性像だ。
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