「嵐の講道館」★☆2007年02月01日 23時53分08秒

1958年大映。枝川弘監督。菅原謙二主演の柔道映画であるが、ちょっと毛色が変わっている。日露戦争に従軍して戻ってきた高信介(菅原謙二)は亡き師匠の娘秋子(若尾文子)に惹かれながらも、許婚の仲である弟(品川隆二)と二人で東京へ行くというのを聞いて身をひき、自らは道場破りに来た空手使い(高松英郎)と岸壁で闘い海に落ち消息をたつ。5年後に中国から戻った信介は失明していた。弟は東京で男爵の書生として順調に出世の道を歩んでいたが、秋子は経済的に彼を支えるために芸者に身をやつしていた。秋子にとって信介は最後までいずれ義兄になる人という存在でしかなく、あきらかに人間性が劣る弟にしか目がいかないヒロインは、いくら若尾ちゃんが好演しようとも、人間的魅力に欠ける。邪悪な弟の精神性がほかの登場人物どころか作品全体のレベルまで引きずりおろしてしまったかのようだ。主人公の運のなさばかり印象に残る作品だった。

「秋の蛍」★★★2007年02月11日 18時01分58秒

1973年TBS日曜劇場。平岩弓枝原作、脚本。山本和夫監督。その後、NHKでシリーズ化された「御宿・かわせみ」のいわばパイロット版。江戸・柳橋の宿の女主人るいは、長崎から久しぶりに江戸へ戻ってきた恋人、与力の東吾(仲谷昇)と一夜を過ごすが、求婚されてもなぜか話をはぐらかしうんと言わない。何やら事情があるようだ。若尾ちゃんが捕物作品に出演するのは本作が初めてだったとか。あまり迫力はなかったが、刀さばきも披露。子供相手にお手玉をしてみせるシーンもあったが、見事だったのは、たしなみというものであろう。音楽・相良直美とクレジットがあったが、石井ふく子プロデューサーならではというか。

「夜の罠」★★★2007年02月15日 23時52分10秒

1967年大映。コーネル・ウールリッチ原作「黒い天使」。富本壮吉監督。夫の浮気を知った妻(若尾文子)は、単身浮気相手のアパートに乗り込むが、その女は殺されていた。夫は殺人容疑者として逮捕される。夫の冤罪を証明する為、妻は山谷のドヤ街に行ったり、麻薬密売者たちに近づいたりし、何度も危険な目に遭遇する。その度に気丈に立ち向かう若尾ちゃんの前についに真犯人が姿を現す。キャストを見渡すと、誰が真犯人だか見え見えなのだが、クライマックスはなかなか迫力があった。

「心の日月」★★☆2007年02月24日 10時07分53秒

1954年大映。菊池寛原作、木村恵吾監督。思いをよせる磯村(菅原謙二)を慕って岡山から上京した皆川麗子(若尾文子)は、飯田橋駅で待ち合わせるが、入り口がふたつあることを知らない二人は会うことができない。以後、いろいろな人たちが二人の間に介在するが、いつも会うことができないという典型的なすれ違い物。プロットがさほどしっかりしている訳ではないけれど、そのゆるさがかえって情感になっている。ここでの若尾ちゃんは、気の強いキャラでない分、ひたすら可憐で美しい。