「妻の日の愛のかたみに」★★★2006年01月28日 09時33分03秒

1965年大映。宮本荘吉監督、池上三重子原作、木下恵介脚本。九州柳川を舞台に、リューマチを患って闘病生活をおくる若尾ちゃんと誠実な夫(船越英二)との悲しくも美しい夫婦愛の物語。中盤からずっと寝たままの顔だけの演技という難しい役柄を見事に演じきっている。川船での嫁入り場面や小学校での授業風景、別府での温浴治療や夏休みに見舞いにきた夫と訪れる高崎山の猿たちとの戯れ等、風情あるシーンが印象に残った。

「仏教と事的世界観」廣松渉+吉田宏晢2006年01月28日 15時13分26秒

養老孟司が述べていた無思想の思想は、1969年刊行のこの本の中で、科学の危機と<無>の思想、事的世界観と<般若>の思想という観点で既に提示されており、実体主義を根拠におく科学の危機を超克するために仏教哲学がいかなる解答を与えうるかが十全に議論されている。養老の本が多くの読者に支持されていることは、やっと廣松の予見に時代が追いついてきたということかもしれない。